中国漢方の相談薬局 日野庄商店

Q1.中医学って何?
Q2.日本でいわれる漢方は、中医学と同じですか?
Q3.中医学が西洋医学と違うところは何ですか?
Q4.「陰陽って何?」・・・陰陽学説とは?
Q5.「五行(ごぎょう)って何?」・・・五行学説とは?
Q6.「からだと自然のバランスを考える」〜中医学の整体観とは?
Q7.どうやって自分にピッタリの食品・生薬を選ぶの?
Q8.気(き)って何?どんな働きがあるの?
Q9.血(けつ)って血液のこと?
Q10.水(すい)って何?
Q11.五臓六腑(ごぞうろっぷ)って何?
Q12.病気の原因にはどんなものがあるの?
Q13.病気はどのように発病するの?
Q14.中医学の治療方法は?
Q15.中医学では、どんな診断があるの?なぜ舌を見るの?

Q1.中医学って何?

 「中医学」(ちゅういがく)は、中国古代哲学の陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)を基礎においた中国伝統医学の名称です。中華人民共和国の成立後、中国の伝統医学は中医学といわれるようになりました。

 日本で呼ばれる”漢方“とは、漢字や漢文のように、中国から伝わった医学という意味からついた日本での呼び名です。つまり中医学が、日本の漢方医学のルーツです。

 中医学は人の生理活動・病気について、現代医学・西洋医学とは違う角度で人体を見つめる独自の観点を持ち、そして特徴的な診断方法と漢方薬・鍼灸・気功・薬膳などの治療方法をもつ、1つの体系化された医学です。

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Q2.日本でいわれる漢方は、中医学と同じですか?

 日本の漢方は、もとは奈良時代に中国の伝統医学が伝わったものです。伝えられた当時は中国と同じものだったと考えられますが、その後日本の鎖国もあり、中国との医学交流がなくなったため、それまで中国から伝えられた理論を、日本独自の考えにより日本国内で発展してきたものが日本漢方です。

 一方中国では、自国の伝統医学を更に発展させて現在の中医学に至っています。つまり、中国の伝統医学は日本と中国それぞれの国において、独自の展開をみせて伝わったために、両者は考え方に若干の違いを生じています。ですから、日本漢方と中医学はともに、もとは中国伝統医学を指すものの、別の医学体系であるといえます。混同を避けるために、中医学は「中国漢方」ともいわれます。

 中医学と日本の漢方の大きな違いは、中医学では、陰陽五行学説・気血津液学説・五臓六腑を中心とした臓腑学説などの理論を用いて病気の本質・個人の体質を見定めていくのに対し、日本の漢方は、症状から直接処方を考えていくのが特徴です。このため中医学はどちらかというと理論的で、対処的に病気を治すということだけでなく、再発を防ぐ体質改善や病気の予防をしたり、健康で長生きをするための養生法なども重要視しています。

 現在の中国では、中医学専門の医科大学を卒業した「中医師」(ちゅういし)といわれるお医者さんがたくさんいます。中医学専門の病院もあります。中医学の長い歴史だけでなく、現在においても中医学に関わる層の厚さ・教育制度・医療環境などもあわせて考えると、日本の漢方にも優れた点はありますが、やはり中国が漢方の本場であるといえるでしょう。

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Q3.中医学が西洋医学と違うところは何ですか?

 中医学が西洋医学と違う特徴は3つあります。まず中医学は予防医学を得意とするということです。中医学では、病気ではないけれど心身の不調で健康とも言えない状態を、「未病」(みびょう)と言い、この未病を治療することです。例えば病院での検査では異常がないのに、気になる自覚症状や苦痛を感じる人もいます。検査に異常な数値が出ず「様子を見ましょう」と言われると何となく安心してしまう人は多いと思います。

 中医学では、こうした状態を病気に進みつつある段階、つまり未病と捉えて、検査で異常が出る本当の病気に進む前に治療します。未病を治療する中医学、これが予防医学を得意とすると言われるゆえんです。

 次に、中医学は身体全体を診る医学です。西洋医学の診断や検査では、肝機能の数値が良くない・胃に潰瘍があるなど臓器を局所的にみることが多いですが、中医学では、病気になったりバランスを崩した臓器だけをみるのではなく、身体の全体がどうなのか、さらに心の状態も含めた心身全ての状態をみることにあります。こうした全体のバランスを重視する考えは「全体観」とよばれます。そして、中医学は個人個人を診る医学です。

 中医学では、ある病気の予防や治療を誰にでも同じ方法をとるのでなく、個人個人を診断してその人にあった処方や治療をします。同じ病気や症状を訴える人でも、個々の体質・病因が異なる場合には、それぞれ個々に適した、異なる漢方薬・治療方法を用います。

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Q4.「陰陽って何?」・・・陰陽学説とは?

 中国の文化・文明を理解するのに避けて通れないのが、陰陽や五行の考え方です。古代から人々が自然の中で培った、素朴な自然の見方から発生し発展した理論をまとめたのが、陰陽五行学説です。陰陽五行学説は、「陰と陽」の陰陽、「木火土金水」(もくかどこんすい)の五行により、自然界のあらゆる現象や事物を解釈する理論です。

太極図

「陰陽」:
陰陽では、右記の太極図(たいきょくず)が自然界や宇宙のあらゆる現象や事物を示しています。 陰陽は、自然界の現象や事物がどういう性質・性格をもち、陽あるいは陰のどちらに属するか、その属性を表すものです。以下にその分類をいくつか表にしました。



(自然界の陰陽)

太陽 春夏 晴れ 熱温
秋冬 寒涼

(人体の陰陽)

上半身 体表 六腑 皮毛 機能 興奮
下半身 体内 五臓 筋骨 物質 抑制

陰陽の関係は?

[1]陰陽は相互に関わりあいます:
陰陽は対立と依存が一体となっているものです。男と女、昼と夜、機能と物質などお互いが無いと成立しません。対立しているようでお互いを必要とする関係です。
[2]陰陽は増減をくり返す:(量的な変化)
春夏は昼が長く夜は短く、秋冬は昼が短く夜が長い、一方が増えると一方が減少する。陰陽の関係はつねに変化しています。
[3]陰陽は転化する:(陽が陰へ、陰が陽への質的変化)
暑い夏が過ぎると涼しい秋が訪れるように、陽が極まれば陰に変化していきます。逆に、寒い冬を終えると温かい春が訪れます。これは陰が極まって陽に変化することです。

 人間の体も自然界の一部であると考えていることから、からだの各部位や動きなども陰陽で分類されています。からだの陰陽が同じ大きさでバランスを保っていれば問題ありませんが、もし陰陽のバランスが崩れたら体調を崩して病気になります。

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Q5.「五行(ごぎょう)って何?」・・・五行学説とは?

 古代の中国では、生活を維持するに欠かせないものを、木(もく)・火(か)・土(ど)・金(こん)・水(すい)としました。これを「五材」といいそれぞれに特性があります。その特性をもとに、自然界の物質とその相互関係を表したものが五行学説です。五行の配当表で、自然界と人体の主なものを以下に表してみます。

五行 五季 五気 五色 五味 五臓 六腑 五体 五竅 五志 五華
酸味
苦味 小腸・三焦 脈管
長夏 湿 甘味 肌肉
辛味 大腸 皮毛 皮毛
鹹味 膀胱

 では五行の「木・火・土・金・水」の相互関係を少し紹介します。

[1]相生の関係:
 まずは文字の並びの順に理解すると、「木は燃えたら火になる。火は燃えた後に土になる。土の中に金がある。金をとかすと水になる。水は木を養う。」という考えからの関係があります。

五行図

 右の図のように、木→火、火→土…と続く時計回りの矢印の関係を「相生」(そうせい)といい、お互いを促進する意味があり、矢印の手前のものが後のものを生み養う、母親と子どものような良い関係です。

[2]相克の関係:
 次に、木→土、土→水…と続く星型の矢印の関係を相克(そうこく)と言います。「木は土に根を張り、土が流れるのを防ぎます。土は水をせき止めます。水は火を消します。火は金を溶かします。金は木を切ることができます。」という考えから、矢印の手前のものが後のものを抑制する関係です。抑制といっても無理に押さえ込むのではなく、子どもが暴走しないように、親が子に諭して生きすぎないように抑えるような関係です。

 この五行の相生・相克のバランスが崩れると、自然界では異常な気象の原因になったり、人体では肉体面や精神面での不調が現れて病気になったりします。この五行の配当では、同じグループに属するものは深い関係があると考えられています。例えば「木」のグループでは、酸味と肝があります。

 中医学では、「酸味」には収斂(しゅうれん;引き締める)作用があると考えます。梅干しを食べると酸っぱさから口元がすぼむようにキュッと引き締まる感じがすると思います。「肝」は血液を貯蔵する臓器ですが、この酸味の収斂作用は肝の血液を貯める働きを助けています。妊婦さんが酸っぱいものを欲しがるのも、妊娠のため普段よりも血液を必要とすることが考えられます。しかし、酸味を摂りすぎると引き締めすぎて血行が悪くなったりして体調を崩すことがあります。何事もほどほどが大事です。

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Q6.「からだと自然のバランスを考える」〜中医学の整体観とは?

 中医学は、心身全体のバランスを考えて、そして人体と自然とのバランスをも考えることを重視します。

中 医学では、ある1つの現象を考えるとき、その部分だけの問題としてみるのではなく、まず全体から考えます。そして全体をみたあとで部分を考えます。この全体として捉える考え方のことを整体観(せいたいかん)、あるいは全体観といわれます。

 この全体観に基づいて、中医学では人間のからだは多くの組織や臓腑が密接に関連しながら形成される1つの有機体と考えています。その人間は自然の中で生活しています。人間も自然界の一員です。ですから、からだを考えるときは、からだの内部を全体観からみるだけにとどまらず、人間を取り囲む自然も含めて1つの統一体と考えます。

 個人の体は自然界から様々な環境的な要素の影響を受けながら絶えず変化しています。こうした状態がまさに生命活動であり、人体が自然界の影響をうけバランスを取りながら平衡を保つ状態を整体性(せいたいせい)といいます。このバランスが崩れると病気の原因になると考えることから、治療するときは常に人体と自然界の関係を一緒に考えて、全体のバランスを調えることを重視しています。

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Q7.どうやって自分にピッタリの食品・生薬を選ぶの?

 中医学の治療では、「人により」・「季節性により」・「地理により」、この3つを十分に考慮して、個人個人にぴったり合う食品や生薬を選ぶことを原則にしています。
3つの項目はそれぞれ、「因人」(いんじん)・「因時」(いんじ)・「因地」(いんち)と呼ばれ、合わせて「三因」といいます。

  1. 因人…個人の体質・性別・年令・病気の状況の違い
  2. 因時…暑さや寒さなど季節の気候の違い、異常気象の特徴の違い
  3. 因地…人が住む土地の寒暖・湿度・乾燥などの気候風土の違い、

 また、体を冷やしすい職場・火を使う工場など生活環境の違い

 健康な人が普通に食べてよい食品も、人によっては積極的に摂る、あるいは控えなければいけない場合もあります。健康な人には何でもない四季の変化も、人によっては特定の季節に持病が悪化するなど、気候や環境の変化もからだに大きく影響します。ですから、中医学では個々の心身全体のバランスを調整するだけでなく、季節性・環境など外界からの影響と人体のバランスも調整することを考慮して、その人だけにぴったりの食品や生薬を選びます。漢方薬も、個人の体質を見定めたうえに、気候の変化などその時々にあわせて処方の内容を調整することが大切です。

*「人により、季節により、地理により」〜具体的な三因(さんいん)

[1]因人:(いんじん)
 因人とは、個人の性別・体質・年令・生理的状態・病理の状況など指しています。例えば、乳幼児のように小さい子どもは、まだ内臓など身体の発育がまだ十分ではありません。消化の良い性質の穏やかのものを食べさせるようにします。早い時期に離乳食を始めたり、大人が好きな刺激の強い食物や濃い味のものをよく与えると、心身のバランスを崩す原因になります。またお年寄りも内臓が弱いという点では同様ですから、胃腸に負担をかけない飲食の配慮が必要です。お年寄りや子どもをはじめ、風邪を引きやすかったり、抵抗力や免疫力の低下している人は、からだを補うものを摂って身体の充実をはかります。そして女性は、血液が深く関わる毎月の生理・妊娠・授乳など特別な時期があります。血液を消耗しやすい特徴をもつため、血液や潤いを補うものを多く摂る必要があります。

[2]因時:(いんじ)
 因時とは、季節性や気候の変化による違いを指します。日本の四季それぞれの気候の特徴にあわせて、食品を選び養生をします。まずは春です。春は、植物が芽吹き動物は冬眠から目覚めて活動を始める様に、人も代謝が活発化して心もウキウキと外へ向けて発散しやすい季節です。もし、この季節に発散作用をもつ辛いもの・スパイシーなものをたくさん摂ると、からだの気(エネルギー)が発散しすぎて消耗し、肉体的に疲れやすく、精神的に不安定になりやすくなってしまいます。ですから、春はこうしたものの摂りすぎに注意して、逆に引き締める作用をもつ酸味の食品を適度に摂り、心身を引き締めるようにします。ただし、酸味も摂りすぎると引き締めすぎてこれもバランスを崩しますので、ほどほどに摂ることが大事です。

 次に夏、日本では暑さとともに湿気が多いです。熱と湿気があわさるいわゆる蒸し暑さは、夏バテの原因となり食欲不振・倦怠感・からだが重く感じる・むくみなど生じます。熱と湿気がからだによけいなものとして影響する夏には、これらを取り除く作用の食品や生薬を摂るようにします。

 秋は乾燥に注意する季節です。髪の毛や肌の乾燥が気になりはじめるこの時期は、かすれ声・空咳・のどの乾燥なども出やすくなります。秋の乾燥を嫌う内臓は肺です。肺は潤いを好む性格をもつので、秋の乾燥が肺に影響すると、肺が関わる呼吸器や皮膚の症状が現れやすくなります。ですから、秋には百合根や梨など潤す作用をもつものを摂って、肺を乾燥から守るようにします。

 そして冬は寒さです。寒さは血行や代謝を低下させます。冬にからだを冷やす飲食物や生ものを摂ればからだの中を冷やし、外の寒さも加わって体の内外ともに冷えて、血行や代謝は一層悪くなります。

 また、冷夏や暖冬など本来の季節にそぐわない気候であったり、例年以上に暑い夏や強い寒波が続く冬など、異常気象もからだに影響します。

[3]因地 :(いんち)
 因地とは、土地柄と言われる土地の特徴や地域性、地理の違いを指しています。
日本でも、寒い地方や暑い地方もあります。また海岸部など湿気の多いところもあれば、乾燥の時期が長い土地もあります。そうした土地柄に合わせた食品を選ぶことが大切です。また、例えば職場など生活環境の違いもあります。常にクーラーがきいて体を冷やしやすい職場や、火を使う工場では熱によって汗をかき過ぎて潤いを消耗しがちです。こうしたことも考慮します。

*「からだを構成する、気・血・水(津液)」

 人や生き物が生命を維持し活動を持続するには、からだを構成する物質とエネルギーを獲得して作らなければなりません。そのために食事や呼吸を通して、からだの外界から原料となるものを取り込んでいます。

 現代医学では、人は飲食物を摂り、それに含まれる栄養素の炭水化物・脂肪・たんぱく質などを、消化器官で糖類・脂肪酸・アミノ酸などに分解して吸収し、呼吸から得た酸素を使ってエネルギー(ATP)や、からだを構成するたんぱく質などを作ります。

 では中医学ではどうかというと、飲食物を「水穀」(すいこく)と言い、栄養素にあたるものを「水穀の精微」(すいこくのせいび)と言います。また酸素にあたるものを「自然界の清気(せいき)」と言います。そしてこの水穀の精微と自然界の清気から作られるものを「気・血・津液」(き・けつ・しんえき)と言います。津液は水(すい)と言われることもあります。中医学では、気・血・津液は「人のからだを構成し、生理活動を活発にする基本的な物質である」としているので、アミノ酸やATPと同じような意味と考えることができます。

 「気」・「血」・「津液」(水)のそれぞれの働きについては各項目のページをご覧下さい。

 中医学では、人のからだは、上にあげた気・血・津液のほか、精(せい)・神(しん)を含めた5つの成分により構成されていると考えます。おおまかに言うと、気は生体のエネルギー、血は血液、津液は正常な体液成分で血液の構成成分にもなるもの、精は生命エネルギーの根本であり、神は感情や情緒などの精神的な要素です。これらの成分が人のこころとからだに充分に満たされて、バランスよく働くことで、人は健康を維持できると考えられています。

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Q8.気(き)って何?どんな働きがあるの?

 「気」(き)とは、からだの内臓や組織器官の働きである機能をつくりだす一種の生体エネルギーです。からだを支える力のもとになるエネルギーです。気にはいくつか種類があり、その中でも「正気」(せいき)は抵抗力・免疫力にあたるもので、からだの生命活動を維持する基本的なエネルギーと考えられています。
中医学では、気をエネルギーと捉えることから、気は消耗することもあれば、補充することもできます。気の補充は常に飲食物から補われます。

 「気」は、以下の3つから作られています。

  1. 大気中の清気(せいき)…呼吸による酸素など
  2. 水穀(すいこく)の精微…飲食物の栄養素
  3. 元気…先天の精と呼ばれる、両親から受け継いだ生命エネルギーの根本です。
    ただし、これは有限のため、飲食物から作られた気で補充します。

 「気」の働きは6つの作用があります。以下の日常の生活からみてもわかる通り、気の働きは私たちの生命維持活動に欠かせないものです。私たちは常に呼吸をしています。そして毎日食事をします。

  1. からだに取り込んだ食べ物や酸素を、からだに必要な栄養物質に変えるのは、気の「気化作用」(きかさよう)です。
  2. そして「栄養作用」で栄養物質がからだを養います。
  3. 呼吸や血液の循環をスムーズにするのは「推動作用」(すいどうさよう)です。
  4. 「温煦作用」(おんくさよう)でからだが温まると新陳代謝も活発になります。
  5. 細菌やウィルス・花粉やハウスダスト・寒暖の変化など、外の環境からからだを守ることに「防衛作用」が働いています。
    また飲食物を消化吸収した後の不要な飲食物の残りカスや二酸化炭素なども「気化作用」で大小便・汗・呼吸としてからだの外に排泄されています。
  6. しかし排泄が過剰だったり、血管の外に血液が漏れたりすると体はダメージを受けるので、「固摂作用」(こせつさよう)が調節して必要以上漏らさないようにしています。
    このように6つの気の作用は、人の生命活動の維持に欠かせない働きをしています。

 病因となる「気」の失調は2つのタイプがあります。

  1. 気の不足・消耗による「気虚」(ききょ)では、疲れやすい・息切れ・カゼをひきやすい・汗をかきやすい・冷えやすいという症状がでます。
  2. 気の流れが停滞する「気滞」(きたい)では、ストレスがたまったり・憂うつな感じがしたり、胸やお腹が張るような症状がでます。

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Q9.血(けつ)って血液のこと?

 「血」(けつ)と呼びます。血とは、脈中(血管)を流れる赤い液体で、からだを栄養し、潤いをあたえるものです。血は食物や腎精(じんせい)からつくられます。
血そのもの自体は、西洋医学でいう血液とほぼ同じと考えてもらってよいと思います。しかし、その血の働きや生成については中医学独特の考え方があります。

 「血」の働きは次の2つです。

  1. 「全身を栄養し、滋潤する物質である」
  2. 「精神活動を支える物質である」

 [1]全身を栄養滋潤する・・・この働きは西洋医学の血液と同様に、血は血管を通して体のすみずみまで行き渡り、内臓・筋肉・皮膚・骨などを滋養する働きです。

 血液が不足すると、からだを栄養できないだけでなく、からだの潤いも失います。例えば、皮膚がカサカサ乾燥する・目がしょぼしょぼして疲れる、ドライアイ・髪の艶がなく切れ毛が多い・爪が割れやすいなどは、血が不足しているときによくみられます。このほか、顔色が白い、あるいはくすんだ黄色がかっている・頭痛・めまい・立ちくらみ・不眠・手足のしびれ・生理が遅れるなども血の不足での症状です。

 [2]精神活動を支える・・・血には「安心」の働きがあると考えます。

 人の思考や精神活動というと、頭で考える、つまり脳で考えることです。良い考えが出ないと、頭を指さされて「血の巡りが悪いんじゃない?」とからかわれることがあるように、頭が良く働きしっかり考えるためには脳に充分な血液が流れていることが大切です。

 そして精神とは頭で考えることでなく、「こころ」で想うことです。中医学では、「心」(しん)が思考や精神活動の中心であると考えます。楽しいことの前には胸がワクワク、緊張で心臓がドキドキ、恋をすれば胸がキュンとするように胸を中心に変化が現れます。こうしたことから精神は心に宿り、心の血と気によって養われて活動すると考えられています。

 血液は、心臓から循環して全身を栄養すると同時に、心臓自身も養って精神を安定させることから*「安心」の働きがあると考えます。こころの冷たい人に「血も涙もない」、「冷血動物」といった言い方があるように、正常な精神活動のためには、充分な血液が必要になります。もし、過労や心配事で心の血が不足すると、不安感・動悸・寝つきが悪い、眠りが浅いなど症状が現れます。*漢方の言葉では、「安神」(あんじん)といいます。

 病因となる血の失調は、

  1. 血が不足する「血虚」(けっきょ)
  2. 血の循環が悪く、滞った状態の「瘀血」(おけつ)があります。

 ところで、血虚は血液不足タイプとはいえ、西洋医学の貧血とは少し意味が違います。病院での検査での貧血とは、「赤血球」の量の低下や組成に関わることです。これに対して中医学の血は、赤血球・白血球・血小板などすべて含めた「血液全体」を意味します。そして血虚は血液全体としての量の不足や働きの低下を意味します。病院で貧血と診断された方をはじめ、貧血と診断されていない方でも、中医学で診断すると血虚としての血液不足の症状がみられる方は実際に多くおられます。上にあげたような血液不足での症状の多くが思い当たる方は、血虚の体質の可能性が高いといえます。

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Q10.水(すい)って何?

 「水」(すい)とは、からだのすべての水分の総称である「津液」(しんえき)のことです。津液は、体内の水分だけでなく、涙・鼻水・唾液・汗・尿なども津液に含まれています。一般の方には、津液という言葉はなじみがないため「水」の言葉で表したりします。「津液(水)」の働きは、からだを潤すことです。栄養する働きよりも潤す働きが中心になっています。津液の大部分は全身をめぐり、一部分は血液成分となります。

 病因となる津液の失調には、

  1. 津液の不足・・・津液が足りないときには、喉が渇く・尿の量が減る・皮膚が乾燥するなど、水分が不足する状態が現れます。水分の不足というと水などの飲み物で補うとイメージしがちですが、食べ物のなかにもたくさんの水分が入っているので、食物をとおして津液を補うことが出来ます。
  2. 津液の停滞・・・津液の量は充分あるけれど、気の不足などの体質で流れが悪い時にはむくみを生じやすくなり、尿の量が少なくなります。

 一般の方には気をつけていただきたいことは、喉が渇いているわけでも無いのに、潤いが欲しいから・水分は体に良いからと言って、水分を必要以上に飲みすぎたりすると、からだの水分が過剰な状態になり、むくみや体が重だるいといった症状を生じやすくなります。また、もともとにからだの「気」が不足している方は、水分を全身に巡らせることができない、汗や尿に変化させにくい体質です。健康な人と同じ水分量をとっても、からだの水分が過剰な状態となりやすいので、水分の摂りすぎないように特に注意が必要です。

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Q11.五臓六腑(ごぞうろっぷ)って何?

 「五臓六腑」は内臓に相当するものです。

 先ず五臓とは、心・肺・脾・肝・腎を指します。五臓は、気・血・津液・精を作り貯蔵します。中医学では、人が生命を維持し活動するための働きを「肝」・「心」・「脾」・「肺」・「腎」の五臓に帰属させています。

 五臓の働きの一部には、肝臓・心臓…など西洋医学でいわれる同じ名前の内臓と同じような働きがありますが、中医学での五臓にはさらに幅広い働きがあります。

[肝(かん)]
 肝臓の機能の他に、自律神経系や目・筋などの感覚器官・組織の働きも、肝の働きと考えています。ストレスでの抑鬱症状にも関係します。

[心(しん)]
 血液の循環機能の他に、精神状態や睡眠などに関わる脳の中枢神経の働きも心の働きと考えています。不安感・不眠などの症状は、心の状態と深く関係しています。

[脾(ひ)]
 消化・吸収の機能に関係します。栄養を摂り込む働きと肌肉(筋肉)と関係が深いことから、脾の異常は栄養状態の悪化・痩せ・肥満と関係します。

[肺(はい)]
 肺臓の呼吸の働きの他に、皮膚の働きや状態にも肺の働きが関わると考えています。咳・痰・喘促など肺の症状に加えて、アトピーなど皮膚病にも関係します。

[腎(じん)]
 腎臓と泌尿器だけでなく、ホルモンに関わる副腎・骨や骨髄などの働きも含んでいます。発育・成長の遅れ、老化現象は腎の衰えと考えています。

 次に六腑とは、小腸・大腸・胃・胆・膀胱・*三焦(さんしょう)を指します。六腑は、飲食物を受け入れ消化して、栄養物が無くなった残りカスを排泄する器官です。

*三焦:臓腑を包み、臓腑の間にも入りこんだ膜状の組織とされています。三焦は、気・火・水の通路と考えられています。

 臓と腑の関係において、生理の働きや臓腑を連絡する通路である「経絡」(けいらく)のつながりによって、それぞれ一臓と一腑の間には特別な関係があります。これを「表裏」(ひょうり)の関係と言います。それぞれの配当は以下の通りです。

五臓 (心包)
六腑 小腸 大腸 膀胱 三焦

 上の配当表では、「心と小腸」・「肺と大腸」・「脾と胃」・「肝と胆」・「腎と膀胱」、そして「*心包(しんぽう)と三焦」が表裏の関係です。三焦と対になるのは心包ですが、心包を臓に加えた場合には、六臓六腑ということもあります。

*心包:心を包む膜で、心を保護し、心に代わって邪気を受けると考えられています。

 裏にある臓の病変でも、表にある腑に症状が現れることがあります。また、表の腑に何らかの問題があって、裏の臓に影響を与えることもあります。

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Q12.病気の原因にはどんなものがあるの?

 漢方では、病気を次の2つに分けて区別しています。気候や環境などからだの外での変化が、人体を障害しておきたものと、体内での異常が原因となっておきたものです。そして病気の原因(病因)には、からだの外から人体を障害する病因を「外感」(がいかん)と言い、体内の異常を引き起こす病因を「内傷」(ないしょう)と言います。

 具体的にいうと、外感には気候や環境の変化があります。これらが病気の原因となる場合に「六淫」(ろくいん)あるいは「外邪」(がいじゃ)といわれます。その他に外傷があります。そして内傷には過労・飲食の不摂生・感情の大きな変化・代謝の異常・先天的な虚弱体質などがあります。

病気のタイプ 病因 病因の内容
体外の変化が、
からだを障害した病気
外感 気候の変化・異常な気候
(六淫・外邪)外傷
体内の異常が原因となり
発症した病気
内傷 過労・飲食の不摂生・感情の大きな変化
代謝の異常・先天的な虚弱体質

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Q13.病気はどのように発病するの?

 中医学では、「邪気(じゃき)の勢いが、からだの正気(せいき)より強いと発病する」と考えます。「正気」(せいき)とは、人の生命活動を維持する基本的なエネルギー・物質のことです。正気の種類には、気・血・津液があります。正気を西洋医学的に考えると、からだの抵抗力とか免疫力にあたるものです。これに対して「邪気」(じゃき)とは、からだと反りが合わない不都合なものです。場合によっては人体に悪影響を与え病気を引き起こすものです。自然界の異常な気候・ウィルス・細菌・ガン・代謝不良で生じたコレステロールなどの病理産物などを指します。

発病の主なパターンは、

  1. 正気の不足や機能が低下して、からだ抵抗力が下がり病気になる。
  2. 正気はあり抵抗力はあるが、それ以上に邪気が強い
  3. 正気が弱い上に、邪気も強い。一番発症しやすいケースです。
    (普段から虚弱でカゼを引きやすい人があっという間にインフルエンザに感染するなど)

発病のパターンを図で表しました。矢印の大きさは正気の充実度・邪気の勢いです。

A.発病しないケース:正気と邪気が拮抗する

   ・・・邪気と折り合いをとって寄せ付けないため発病しない。
   ・・・発病しても邪気と闘争し回復できる。

B.発病するケース:いずれも正気が負けてしまうので発病する。

   1)邪気は強くないが、正気が衰退している。

   2)正気は正常でも、邪気が強力である。・・・インフルエンザの強いウィルスなど

   3)正気も弱く、邪気も強い。・・・最も発病しやすいケース

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Q14.中医学の治療方法は?

 病気の発症は、正気(抵抗力や免疫力)と邪気(時として発病の原因となる体にとって不都合なもの)が闘争した結果、邪気の勢いが正気を上回っておこると考えます。病気の治療では、正気と邪気の状態に応じて、体に必要なものは補い、体に不都合で余分なものは取り去る方法を使い分けます。

  1. 正気が弱いか不足して病気になった場合には、正気を補い助けて治療します。
  2. 邪気が強くて病気になった場合には、邪気を取り去り治療します。
  3. 正気が弱く、邪気も強い病気の場合には、正気を補う方法と邪気を取り去る方法を併用して治療します。

 漢方の治療では、体に必要なものを補うことを扶正(ふせい)といい、体に不都合なものを取り去ることを去邪(きょじゃ)といいます。

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Q15.中医学では、どんな診断があるの?なぜ舌を見るの?

 中医学の診察方は、「四診」と呼ばれる独特のものです。四診とは、「望診」(ぼうしん)・「聞診」(ぶんしん)・「問診」(もんしん)・「切診」(せっしん)の4つのことです。「舌をみる」ことは「舌診」(ぜっしん)と呼ばれ、この中の望診に含まれます。

  1. [望診]
    からだ全体と局所、顔色、舌、排泄物などをみることで情報を得るものです。
  2. [聞診]
    声や呼吸の音を聞いたり、からだや排泄物のにおいなどをかいだりする。
  3. [問診]
    悩みの病気や症状について詳しく聞く、いわゆる問診です。
  4. [切診]
    脈をとったり、患部をさわる触診です。

 なぜ「舌」をみるのかというと、体調が悪いときは顔色も悪くなりますが、望診においては顔色より、舌のほうが内臓など体の状態の情報が多くみることができます。

 また舌の何をみるのかというと、舌の形(形状・大きさ・厚さ)・舌の色・苔の色と厚さなどをみることで、体の「気」・「血」・「津液」の状態がどうなのか情報を得ています。体の気や血が不足していないか、体に余分な水分が溜まっていないか・熱がこもっていないか、体が冷えていないか、お血(おけつ)と呼ばれる血の滞りの程度など、非常に多くの情報を得ることができます。ですから、漢方において舌をみることは、問診など他の診察で得られた情報の裏づけをとることになるので、とても重要な診察方法です。そうした情報を分析して、個人の病気の本質・体質を見定めていくのが漢方の診察です。

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