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漢方について

Q7.どうやって自分にピッタリの食品・生薬を選ぶの?

2014.04.18

 中医学の治療では、「人により」・「季節性により」・「地理により」、この3つを十分に考慮して、個人個人にぴったり合う食品や生薬を選ぶことを原則にしています。

 3つの項目はそれぞれ、「因人」(いんじん)・「因時」(いんじ)・「因地」(いんち)と呼ばれ、合わせて「三因」といいます。

1.因人…個人の体質・性別・年令・病気の状況の違い
2.因時…暑さや寒さなど季節の気候の違い、異常気象の特徴の違い
3.因地…人が住む土地の寒暖・湿度・乾燥などの気候風土の違い、

 また、体を冷やしすい職場・火を使う工場など生活環境の違い

 健康な人が普通に食べてよい食品も、人によっては積極的に摂る、あるいは控えなければいけない場合もあります。健康な人には何でもない四季の変化も、人によっては特定の季節に持病が悪化するなど、気候や環境の変化もからだに大きく影響します。ですから、中医学では個々の心身全体のバランスを調整するだけでなく、季節性・環境など外界からの影響と人体のバランスも調整することを考慮して、その人だけにぴったりの食品や生薬を選びます。漢方薬も、個人の体質を見定めたうえに、気候の変化などその時々にあわせて処方の内容を調整することが大切です。

 *「人により、季節により、地理により」~具体的な三因(さんいん)

[1]因人:(いんじん)

 因人とは、個人の性別・体質・年令・生理的状態・病理の状況など指しています。例えば、乳幼児のように小さい子どもは、まだ内臓など身体の発育がまだ十分ではありません。消化の良い性質の穏やかのものを食べさせるようにします。早い時期に離乳食を始めたり、大人が好きな刺激の強い食物や濃い味のものをよく与えると、心身のバランスを崩す原因になります。またお年寄りも内臓が弱いという点では同様ですから、胃腸に負担をかけない飲食の配慮が必要です。お年寄りや子どもをはじめ、風邪を引きやすかったり、抵抗力や免疫力の低下している人は、からだを補うものを摂って身体の充実をはかります。そして女性は、血液が深く関わる毎月の生理・妊娠・授乳など特別な時期があります。血液を消耗しやすい特徴をもつため、血液や潤いを補うものを多く摂る必要があります。

[2]因時:(いんじ)

 因時とは、季節性や気候の変化による違いを指します。日本の四季それぞれの気候の特徴にあわせて、食品を選び養生をします。まずは春です。春は、植物が芽吹き動物は冬眠から目覚めて活動を始める様に、人も代謝が活発化して心もウキウキと外へ向けて発散しやすい季節です。もし、この季節に発散作用をもつ辛いもの・スパイシーなものをたくさん摂ると、からだの気(エネルギー)が発散しすぎて消耗し、肉体的に疲れやすく、精神的に不安定になりやすくなってしまいます。ですから、春はこうしたものの摂りすぎに注意して、逆に引き締める作用をもつ酸味の食品を適度に摂り、心身を引き締めるようにします。ただし、酸味も摂りすぎると引き締めすぎてこれもバランスを崩しますので、ほどほどに摂ることが大事です。

 次に夏、日本では暑さとともに湿気が多いです。熱と湿気があわさるいわゆる蒸し暑さは、夏バテの原因となり食欲不振・倦怠感・からだが重く感じる・むくみなど生じます。熱と湿気がからだによけいなものとして影響する夏には、これらを取り除く作用の食品や生薬を摂るようにします。

 秋は乾燥に注意する季節です。髪の毛や肌の乾燥が気になりはじめるこの時期は、かすれ声・空咳・のどの乾燥なども出やすくなります。秋の乾燥を嫌う内臓は肺です。肺は潤いを好む性格をもつので、秋の乾燥が肺に影響すると、肺が関わる呼吸器や皮膚の症状が現れやすくなります。ですから、秋には百合根や梨など潤す作用をもつものを摂って、肺を乾燥から守るようにします。

 そして冬は寒さです。寒さは血行や代謝を低下させます。冬にからだを冷やす飲食物や生ものを摂ればからだの中を冷やし、外の寒さも加わって体の内外ともに冷えて、血行や代謝は一層悪くなります。

 また、冷夏や暖冬など本来の季節にそぐわない気候であったり、例年以上に暑い夏や強い寒波が続く冬など、異常気象もからだに影響します。

[3]因地 :(いんち)

 因地とは、土地柄と言われる土地の特徴や地域性、地理の違いを指しています。
日本でも、寒い地方や暑い地方もあります。また海岸部など湿気の多いところもあれば、乾燥の時期が長い土地もあります。そうした土地柄に合わせた食品を選ぶことが大切です。また、例えば職場など生活環境の違いもあります。常にクーラーがきいて体を冷やしやすい職場や、火を使う工場では熱によって汗をかき過ぎて潤いを消耗しがちです。こうしたことも考慮します。

*「からだを構成する、気・血・水(津液)」

 人や生き物が生命を維持し活動を持続するには、からだを構成する物質とエネルギーを獲得して作らなければなりません。そのために食事や呼吸を通して、からだの外界から原料となるものを取り込んでいます。

 現代医学では、人は飲食物を摂り、それに含まれる栄養素の炭水化物・脂肪・たんぱく質などを、消化器官で糖類・脂肪酸・アミノ酸などに分解して吸収し、呼吸から得た酸素を使ってエネルギー(ATP)や、からだを構成するたんぱく質などを作ります。

 では中医学ではどうかというと、飲食物を「水穀」(すいこく)と言い、栄養素にあたるものを「水穀の精微」(すいこくのせいび)と言います。また酸素にあたるものを「自然界の清気(せいき)」と言います。そしてこの水穀の精微と自然界の清気から作られるものを「気・血・津液」(き・けつ・しんえき)と言います。津液は水(すい)と言われることもあります。中医学では、気・血・津液は「人のからだを構成し、生理活動を活発にする基本的な物質である」としているので、アミノ酸やATPと同じような意味と考えることができます。

どうやって自分にピッタリの食品・生薬を選ぶの?
「気」「血」「津液」(水)のそれぞれの働きについては各項目のページをご覧下さい。

 中医学では、人のからだは、上にあげた気・血・津液のほか、精(せい)・神(しん)を含めた5つの成分により構成されていると考えます。おおまかに言うと、気は生体のエネルギー、血は血液、津液は正常な体液成分で血液の構成成分にもなるもの、精は生命エネルギーの根本であり、神は感情や情緒などの精神的な要素です。これらの成分が人のこころとからだに充分に満たされて、バランスよく働くことで、人は健康を維持できると考えられています。

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