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漢方について

第9回 お腹の中も大そうじ!

2008.12.01

 いよいよ冬ですね。寒くなると代謝が低下して便秘になってしまう方がいます。さまざまな便秘解消法がありますが、場合によっては却って悪化させてしまうことがあります。漢方では便秘と言っても原因や体質に合わせて対処方法は違います。

①熱により便が乾燥して滞った便秘を「熱秘」(ねつひ)と言います。

 大便は硬く乾燥し、吹き出物・のぼせなどを伴います。熱を冷ます涼血清営顆粒(りょうけつせいえいかりゅう)などを使います。熱をこもらせる辛い物や味の濃い物は禁物です。

②冷え性や体を冷やし腸の動きが悪くなった便秘を「冷秘」(れいひ)と言います。

 冬の寒さで悪化・排便困難・お腹や手足が冷える・顔色が白いなどの症状の方に、体を温める金匱腎気丸(きんきじんきがん)などを使います。生野菜や野菜ジュース、朝起き抜けの冷たいお水は直接内臓を冷すので、冷秘には逆効果です。また、便秘薬の大黄・センナ・アロエなども体を冷す性質があるので、冷秘の人は長期連用せず、温める生薬と併用しましょう。

③潤いやエネルギー不足による便秘を「虚秘」(きょひ)と言います。

 血液不足で腸を潤せず便が乾燥する・乾燥肌・立ちくらみがするという方には血液を補う婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)が、排便力が低下しているお年寄りには麦味参顆粒(ばくみさんかりゅう)がオススメです。このタイプでは食物繊維を摂り過ぎると腸に負担をかけ便秘を悪化させてしまいます。この他、ストレスによる便秘の「気秘」(きひ)などもあます。

 詳細はHP(下記の「パンダのオマケHP」)で紹介します。今年のゴミは今年のうちに。スッキリお腹で新年をお迎え下さい。

パンダのオマケHP

④ストレスによる便秘を、「気秘」(きひ)と言います。

 ストレスで気の巡りが悪くなり鬱滞すると、便をスムーズに運べなくなります。便意はあるものの排便は困難。ガスがたまる様にお腹が脹り、ひどい時には痛む。ゲップやおならが多い。その他、イライラする、時に冷えのぼせなど。開気丸や逍遙丸を基本に用いて、必要に応じて大黄・センナなど便通を促す*瀉下薬(しゃげやく)を加えたりします。

 *瀉下薬(しゃげやく)・・・大便を排出する薬物を瀉下薬と言います。薬物によって、腸を刺激するもの、腸を潤すもの、下痢を引き起こすものなど異なる作用で排便を促します。

 腸を刺激したり、下痢を引き起こす薬物は作用が強いため、お年寄り・虚弱者・妊婦・産後・授乳期・月経期には慎重に用いる、あるいは禁忌(きんき:使うべきでない)という決まりがあります。例えば、便秘によく使われる大黄・センナ・アロエなども妊婦には禁忌です。月経期・授乳中・虚弱者にも禁忌あるいは慎重を要するので、必ず専門家に相談して下さい。また下剤の使用について、同じ下剤を長期間連用すると効かなくなることがあるので、何種類か自分にあったものをローテーションして使うと良いでしょう。

 以下にコラムで紹介したタイプと合わせて整理しておきます。

【タイプ】【原因・体質】        【よく用いる処方】
 ①熱秘 熱により腸や便が乾燥      涼血清営顆粒・大黄甘草湯・麻子仁丸
 ②冷秘 冷えにより腸の動きが悪くなる  金匱腎気丸・人参湯(+瀉下薬)
 ③虚秘 A、血液不足で腸・便が乾燥    婦宝当帰膠・潤腸湯・十全大補丸
     B、エネルギー不足で排便力低下  麦味参顆粒・衛益顆粒
 ④気秘 ストレスで腸の動きが悪化    開気丸・逍遙丸(+瀉下薬)

 女性の場合、特に妊婦さんや授乳期の女性では、③虚秘のA.血液不足のタイプが多く見られます。虚秘のタイプでも瀉下薬を併用することもありますが、妊婦さんをはじめとする女性や虚弱な方の場合には、使うべきでないという禁忌があるので、瀉下剤は用いない方が無難です。

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