去る10月5日~8日、中医学の研修で中国に行って来ました。今回の研修をコーディネイトして頂いたのは、中医師・鍼灸師の武藤勝俊先生です。同行した先生方は、私も所属する日本中医薬研究会の先生方です。今回の主な目的は、北京中医医院での研修と安国生薬市場の見学です。
10月5日(日)
成田空港から出発して中国・北京に到着、2年振りの訪中です。空港の施設・内装などが綺麗にリニューアルされていました。市内に入るとたくさん高層ビルが建ちならび、地下鉄も導入されていました。近代化が進む中国ですが、オリンピック効果が更に拍車をかけた印象でした。 その日のうちに北京から車で約3時間半かけ、生薬市場のある安国市へ移動です。到着は夜になりこの日はすぐ夕食です。今回リクエストしていた魚の浮き袋の料理や、スッポンのスープなど薬膳をいただきました。魚の浮き袋は「腎」を補う食品として最近注目しています。食感はカキ鍋のカキの中身を抜いたようなフニャッとしたものですが、味付けは四川料理風の甘辛でなかなか美味でした。その他、スッポンはプリプリと天然のコラーゲンがたっぷりで、女性に喜ばれそうな一品でした。
10月6日(月)
中国には、四大生薬市場と呼ばれる4つの有名な生薬市場があります。その1つが今日見学する安国生薬市場です。安国市の人口は約50~60万人。日本なら地方都市くらいの人口ですが、広い中国では村くらいの規模です。働いている人の10人に6人は生薬を扱う仕事をしているそうです。 商店街はほとんどのお店が生薬を扱っています。お店の看板には人参・鹿茸・冬虫夏草など生薬の名前が書かれ、まさに生薬の問屋街といった感じです。 生薬市場の見学の前に、安国市では薬の神様が祭られているとの事で、お参りをしました。ある建物の中では、 “華佗”(かだ)など薬に関わる昔の偉人の像などもありました。 そう言えば、お線香が1mくらいの大きなものでビックリ、1本160円くらいでした。また、お金を燃やす代わりに作り物の紙幣が売られていました。これは使わなかったので値段は分かりませんが、色とりどりで面白いものでした。
お参りを済ませてから生薬市場に到着。メインの生薬市場のビルに入ると、さまざまな植物の生薬の香り、市場で商売をする人達の活気で溢れていました。1階は植物の生薬、2階では動物の生薬が売られていました。 1階では様々な植物生薬の香りが楽しめますが、2階の動物生薬の売り場では、サソリ・ムカデ・タツノオトシゴなどがどっさりと積まれ、それらが放つ独特のモワ~ンとした香りは長く居るとちょっと気持ちが悪くなります。中でも、鹿や犬のオチンチンがたくさん積み並べられているのを見ると、男性としてなんだか切ない感じがしました。 植物・動物ともに、同じ1種類の生薬でも、香り・色調・大きさなどに違いがありました。また日本ではなかなか見られないものも多く、「へぇ~っ!これが、あの〇〇か!」と驚きの連続でした。その都度に北京中医医院・薬剤部の李先生が、生薬1つ1つを手に取って、品質の見分け方や薬効のポイントなど丁寧に解説してくれました。こうした比較・発見は実物を見ないと分かりません。遠くまで来た甲斐がありました。 生薬市場の見学を終えて北京に戻り、庶民的な食堂でいろんなギョーザを楽しむ昼食となりました。テーブルの上には人数分の食事セット?お皿+カップ+レンゲが一緒にラッピングされたものが置いてあります。自分でラップを破いて使います。中華料理は大勢で食べるので食器の準備の効率アップと衛生面を考えたものと思います。 午後からは、まだ新しい地下鉄に乗って、楽しみにしていた医学・薬学専門の本屋さんへ買い物に行きました。探していた中医学の専門書をはじめ、症例集・古典・中薬学の本など欲しい本ばかりです。どれを買おうかと立ち読みをしていると、すぐ1時間くらい経ってしまいます。本の値段も日本で買うと何倍も高くなるので、帰りの荷物が重くなることも忘れ、この機会にあさるように20冊くらい購入しました。同行した先生方もたくさんの本を抱えて満足そうでした。 この日の夕飯はおなじみの北京ダックをいただきました。食事が美味しくお酒もすすみました。明日はいよいよ北京中医医院での研修です。10月7日(火)
今日は北京中医医院での研修です。北京中医医院は有名な総合病院です。中医学のお医者さんだけでなく、西洋医学のお医者さんもいますので、中医学の診察とともに西洋医学の検査・診断も受けることができます。こうした総合病院は中国各地にあり、中医学・西洋医学のそれぞれ良いところを取り入れた治療が、ガン・糖尿病・不妊症などさまざまな病気で施されています。今回は、内科での外来研修と症例検討を含めた講義を受けます。 中医医院に向かう途中、ホテルの近所にある食堂で朝食です。食堂は通勤前の地元の方でとても混んでいました。温かいお豆腐の餡かけ料理とワンタンスープを頂きました。あっさりとした味付けで、お酒を飲んだ翌日のお腹にも優しく、とても美味しかったです。料金も5人で33元(1人当たり100円くらいかな?)と、とってもリーズナブルでした。午前中は、内科病棟に入り外来研修です。内科副主任の周先生が内科の外来に訪れるいろいろな患者さんを丁寧に問診しながら、脈と舌を診て診断・処方をしていきます。 カルテは電子化されており、これまでの経過や処方のチェックなども簡単にできるようになっています。午前中の外来は23人の患者さんを診て終了となりました。
昼食は医院食堂の特別室で羊のしゃぶしゃぶをいただきました。羊独特の匂いも無く、美味しく頂きました。またお昼の休憩時間を利用して、中国式の按摩を体験させてもらいました。これがホントに気持ち良くて、開始して3分後にはもう夢心地で眠ってしまいました。今回は時間があまりなかったので、機会があればぜひもう一度お願いしたいです。
午後からは、外来研修で指導いただいた周先生による講義を受けました。周先生は内科を全般診られるのはもちろんですが、胃腸と腎臓の病気を特に専門としています。今回の講義では、外来での患者さんの症例および処方についての解説をいただくとともに、周先生がこれまで研究されてきた糖尿病の診断についての考え方を特別に聞くことができました。これがとても素晴らしい内容で、この話を聞いただけでも今回北京に来た甲斐があったねと同行した先生方と一緒に感動していました。
夕食前に、同行した先生のリクエストでまた本屋さんへ行きました。(ホントに皆さん勉強熱心です。)私もだいたい欲しい本は買ったつもりでしたが、結局何冊か追加して買ってしまいました。最後の晩は、美味しい紹興酒のあるお店で夕食となりました。白酒も美味しいのですがアルコール度数が高いので、私は中華料理を食べる時には紹興酒が好きです。充実した研修を振り返りながら年代物の美味しい紹興酒を頂いて最高の夜でした。
10月8日(水)
帰国の日です。午前中にオリンピック会場となった「鳥の巣」を見学した後、空港に向かいました。鳥の巣は中国の人にとっても観光名所になっているようで、たくさんの人達が見学していました。午後の便で北京の空港から成田空港まで、無事に帰国となりました。短い日数での研修でしたが、とても充実した研修でした。お世話になった武藤先生、同行した先生方に本当に感謝しています。ぜひまた楽しい研修をご一緒したいと思います。